693 / 1000

第693話

side:斗真 搭乗した時、CAのひそひそ声が耳に入った。 (あの背の高い人、滅茶苦茶イケメン! 久し振りのヒット!) (あら、もう一人もイケメンよ。) (この席に来るなんて…何処かの経営者かしら。) (誰か連絡先聞いてきてよ。) (二人とも…素敵!) 胸糞悪い。 俺の希に色目を使うな! せっかくのファーストクラスが台無しになった。 イラつく。 希が『新婚旅行だから』と、大枚を(はた)いて準備してくれたのに。 希は…気付いていないのか? そりゃそうか。 自慢じゃないが、俺しか見えてないもんな。 …それで少し気分が落ち着いてきた。 料理も美味かった。 酒も。 それなのに、一度イラついた心は元には戻らない。 サービスのパジャマに着替えて毛布を被った。 ふと目が覚めて、隣の希の様子を伺うと、ぐっすりと眠っていた。 長い睫毛が息をする度に震えている。 相変わらずのイケメン。 起きてても寝ててもイケメンってどうなんだ!? 暫く見惚れていたら、目を覚ましてしまった。 柔らかな声音で尋ねられた。 「起きてたの?」 「うん。さっき。」 「…何見てたの?」 「…希。寝てる時も綺麗だなぁ…って、つい。 お前、やっぱイケメンだなぁ。」 希は俺の頬をくいくいと引っ張りながら 「お前だって。未だに他の課の女どもから狙われてるの知らないのか?」 「知らない。興味ないもん。」 「…ったく…無自覚にも程がある…」 「だって、希しか見てないから。」 「チッ…そうやって煽る…」 「煽ってないって。本当に…希だけだから。」 小さく呟きながら俯いてしまった俺の頭を身を乗り出してわしゃわしゃと撫でまくり、隙を見てキスしてきた。

ともだちにシェアしよう!