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第696話

「意外と道路空いてるんだね。」 「みんな家でのんびりしてるんじゃないか? 空港は凄い混雑ぶりだったけどな。」 昨日まで過ごしてたボストンの空と繋がってるんだよなー なんて、ユータやマイク、そして俺の家族達と過ごした楽しかった時間を思い出してちょっぴりセンチな思いに耽り…あの数日間に起きたことは、本当だったのかと、何だかあの事件だけ異質な出来事のように思われ、ぼんやりと窓の外を眺めながらも、左手はしっかりと斗真の手を握りしめていた。 いつもの時間よりも30分も早くマンションに帰ってきた。 ほんの数日いなかっただけなのに、この空気感が堪らなく懐かしい。 ゴロゴロと大きなキャリーケースを引き摺るように、部屋の中へ運び入れた。 早速テレビをつけると、各地の正月風景が映し出された。 「おっ、さっき到着したゲート付近だ。 ひょっとして俺達が映ってたりして。 混雑してたけど、やっぱり正月休みは海外に出掛ける人も多いんだな。」 「俺達もそうじゃん。」 「ははっ、そうだったな。あー、やっぱ自分ちがいいや。」 「そうだな。ほら、希、洗濯物出せよ。 回しとくし。 それと…スーツ、クリーニングに出すから、それも出して。」 「…斗真…後でいいじゃん…ちょっとのんび」 「何言ってんの?後回しにしたら益々片付けが嫌になるんだぞ! ほら、言うこと聞いて! さっさと洗濯物出して!」 斗真の言うことを聞いておかないと、後が怖い。 几帳面な伴侶に追い立てられるようにスーツケースを開け、次々と洗濯物を引っ張り出して籠に突っ込んだ。 ブラシや洗顔フォームなんかを洗面所や風呂場に戻し、土産物をテーブルに並べておく。 取り敢えずケースの中身を空にして、言われた通りに拭いていく。 その間に斗真は、一度目の洗濯を回し、二人分のスーツを抱えて、コンシェルジュの所へ持って行ったらしい。 …正月明けにはクリーニングの終わったものが届けられるはず。 流石斗真、抜かりがない。
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