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第699話
ごった返す店内をカートを押しながら斗真と
「これ美味しそうかも」
「正月っぽい」
「こっちの小さいのにするか」
「あー、ラーメン食べたいっ!」
「つまみも…」
「野菜も食べないと!」
なんて言いながら、結局カゴ一杯に積み上げて、長いレジの列につき、ほとほと疲れ果ててスーパーを後にした。
正月にスーパーしか行かないのかよ、なんて軽口を叩きながら、ふと思い出したように斗真が話し始めた。
「親父達の若い頃ってさ、コンビニもないし、スーパーだって三が日休みだったんだってさ。
コンビニないんだよ!?信じられる?」
「えーっ!マジか…買い物どうしてたの?」
「だからさ、年末に買い込んで 日持ちのするおせち料理作ったり、雑煮食べたりしてたんだろう。
今じゃ考えられないけどな。」
「便利過ぎてありがたみがないよな。
俺達は休みだけど、正月から働く人もいる訳だし。」
「ホントだ。“古き良き日本”って感じ?
『昭和」だよ、『昭和』!」
「そんなこと考えられない!」
「あははっ、今時の世代で良かった。
もう、年号も変わっちまうけどな。」
そうこうしているうちに家に着いて、大量の食材をさっさと冷蔵庫や棚に片付けると、テレビをつけた。
「うーん…どこも似たような番組ばっか。」
「お笑いか…希、見る?」
「消してもいいよ…俺は斗真の声聞いてたいから。」
「…お前…タラシか!?
何さり気に俺を口説いてるんだよっ!
…ばか…」
「声だけじゃなくって…身体の声も聞きたいんだけど…」
「…まだ明るいじゃんか…」
「でも…いい?」
「何だよ、その聞き方。」
「じゃあ、どう言えばいいの?」
「………………」
「斗真ぁ……抱きたい…抱かせろ。」
真昼間の明るい部屋。
抱きしめると柔く拒絶のフリをする斗真。
その背中を優しく撫で、後頭部を固定すると唇を合わせた。、
「んっ」
邪魔するものは何もない。
舌先を捻じ込んで、むしゃぶりついた。
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