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第707話

嬉々としてすぐにでも俺を横抱きにしてバスルームに連れ去りそうな希を慌てて制した。 「お前、『何にもしない』って言うけどさ、どさくさに紛れて あちこち触ったり弄ったりして、その気にさせて結局風呂場エッチに雪崩れ込むじゃん。 これ以上されたら腰砕けちまうよ。 自分でする!」 目の前には思いっ切り耳と尻尾の垂れた大型犬の出来上がりだ。 「…そんなに全力で拒否しなくても…」 「休みはまだあるんだ。 ゆっくりと…寝正月を楽しもうぜ。」 「『寝正月』…『ねしょうがつ』…『寝』… 斗真、それ“お誘い”って思っていいの?」 「ばか!ストレートに言うなよ。 言った本人が小っ恥ずかしいわ。 …俺、風呂入ってくる。」 大きく尻尾を振り始めた駄犬を無視して、俺はゆっくりと身体を起こした。 思ったより痛みはない。 日頃の柔軟体操の成果か?希には黙っていよう。 調子に乗ってあらぬ体位を試されたら大変だ。 あれこれ構いたがる希を適当にあしらい、時間をかけて洗い流し、纏わり付いた情欲の跡を消し去った。 どうせまた希の匂いにマーキングされるんだけどな。 おまけに、喉元を始めとして、あらゆる所に残された所有の印。 ほんっとにアイツはを付けたがるんだよ。喉なんて、ワイシャツで隠せない位置じゃんか。 こんなの人に見られたら、何て言って冷やかされるか分からないよ。 でも、そうしたがる希の気持ちを思うと、何とも面映くうれしくもあり、口元がニヤケてしまう。 尻尾を振りながら待っている駄犬の元へ戻るべく、俺は少し痛む腰を庇いながら着替えを済ませた。

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