710 / 1000
第710話
希が子供みたいにはしゃぎながら言った。
「凄い…ホントに降ってる!…雪だるまできるかな。」
「雪だるまぁ!?寒いから外に出たくないよ。
休みで良かった…っていうか、降る前に帰国してラッキーだったな。
出国が一日遅ければ、空港で立ち往生してたかも。」
「そうだな。俺達最強!
ねぇ、雪って食べたら美味いかな?」
「えーっ。ただ冷たいだけだろ?
それに地上に落ちてくる前に、空中のホコリやらゴミやらくっ付いてんじゃないのか?」
「もーーっ!斗真は夢もムードもロマンもないのかっ!」
むうっ と膨れた希に、背中から抱え込まれて、落ちては舞う雪に見惚れていた。
「綺麗だな。」
「うん。これは……完全に積もる降り方だな。何処もかも真っ白になるよ。
寒いし出かける予定もないし、食材も買い込んだから、このまま引きこもってもいいぞ。」
「…そうだな…希と二人っきりで…んっ」
覗き込まれて唇を奪われた。
テレビからは、芸人達のけたたましく笑う声が聞こえる。
外の静寂とのギャップに、自分が今何処にいるのか一瞬戸惑い、目の前の温もりに縋り付いた。
キツく抱きしめられ、早く口を開けろと唇をノックされた。
そっと唇を開くと、俺を知り尽くした舌先が容易く侵入してくる。
それ自体が意思を持つように、互いの舌は じゃれ合うように絡まる。
次第に熱を帯びていくカラダ。
何度も何度も角度を変え、口内を貪り尽くす。
飲み切れない唾液は喉元を滑り落ち、荒くて甘い鼻に抜ける吐息が耳を犯す。
さっき抱き合ったばかりなのに、不埒な身体はもう情欲の兆しを見せ始めていた。
ともだちにシェアしよう!