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第710話

希が子供みたいにはしゃぎながら言った。 「凄い…ホントに降ってる!…雪だるまできるかな。」 「雪だるまぁ!?寒いから外に出たくないよ。 休みで良かった…っていうか、降る前に帰国してラッキーだったな。 出国が一日遅ければ、空港で立ち往生してたかも。」 「そうだな。俺達最強! ねぇ、雪って食べたら美味いかな?」 「えーっ。ただ冷たいだけだろ? それに地上に落ちてくる前に、空中のホコリやらゴミやらくっ付いてんじゃないのか?」 「もーーっ!斗真は夢もムードもロマンもないのかっ!」 むうっ と膨れた希に、背中から抱え込まれて、落ちては舞う雪に見惚れていた。 「綺麗だな。」 「うん。これは……完全に積もる降り方だな。何処もかも真っ白になるよ。 寒いし出かける予定もないし、食材も買い込んだから、このまま引きこもってもいいぞ。」 「…そうだな…希と二人っきりで…んっ」 覗き込まれて唇を奪われた。 テレビからは、芸人達のけたたましく笑う声が聞こえる。 外の静寂とのギャップに、自分が今何処にいるのか一瞬戸惑い、目の前の温もりに縋り付いた。 キツく抱きしめられ、早く口を開けろと唇をノックされた。 そっと唇を開くと、俺を知り尽くした舌先が容易く侵入してくる。 それ自体が意思を持つように、互いの舌は じゃれ合うように絡まる。 次第に熱を帯びていくカラダ。 何度も何度も角度を変え、口内を貪り尽くす。 飲み切れない唾液は喉元を滑り落ち、荒くて甘い鼻に抜ける吐息が耳を犯す。 さっき抱き合ったばかりなのに、不埒な身体はもう情欲の兆しを見せ始めていた。

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