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第714話
はぁっ とため息をついた斗真は迷惑そうな声を出す。
「ほんっとに…俺、眠たいんだってば…
お前も寝ろよ。」
「ごめんって。でも、構いたくって…」
「…分かってる。分かってるよ、希。
抱いててやるから…今はちょっと寝かせて…な?」
斗真はそう言うと、俺の首の下に手を回し込み抱き寄せた。
いつもは俺がそうするのに、逆の立場になると何だか変な感じがする。
俺は素直に斗真に身を預け、もぞもぞと動いて楽な姿勢に落ち着いた。
…守られてるみたいで安心する。
斗真、いつもこんな気持ちになってるのか?
「希、起きたらちゃんとシような。」
斗真が俺の頭を撫で、顔を赤らめながら言ってくれた!
ワザと念押ししてやる。
「今はお利口で寝るけど、起きたら…いいよな?」
「分かってる。俺もそうしたいから…
でもさ、起きたら雑煮作ってくれよ。それ食ってからな…」
「オーケー。とびきり美味いやつ作ってやるよ。
…お休み、斗真。邪魔してごめんな。」
「…ん。お休み…希…」
斗真は俺を大事そうに抱えて目を瞑ると、間もなく静かな寝息を立て始めた。
今度こそ完全に寝落ちしたようだった。
…諦めて俺も斗真を構うのは止めた。
だって邪魔をしたら、本格的に斗真の機嫌を損ねてしまう。
そうなったらもう、エッチどころの騒ぎではなくなってしまうから…目を閉じその息遣いを感じていた。
斗真…俺がどれくらいお前のことを思ってるのか知ってる?
そう尋ねたら、きっと失笑して『知ってる』って一言だけ答えるんだろうな。
でもな、お前が思ってる以上に粘着的に愛してるんだぞ。
監禁レベルだと言ったら引くかな。
ふっ。何を今更。
そんな俺の思いも知らず、斗真は安らかな寝息を立てる。
愛してるよ。お休み、斗真。
起きたら覚悟しとけよな。
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