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第730話
「あっ、あっ、のぞみっ、ゆっくりっ」
俺の願いの言葉も無視して、希が腰を突き立ててくる。
激しい破裂音が響き、熱気が篭ってくる。
じわりと吹き出す汗も厭わず、お互いの身体を撫で擦り合い、腰が揺れ背中が仰け反る。
…スローって言ってたのに…何処に行った…
いや、煽ったのは俺じゃないか!
でも“ゆっくり”って念押ししたぞ!
「あっ、のぞ、みっ、はげしいっ」
「ごめっ、と、うま、ごめんっ」
壮絶な色気を増した希の瞳にロックオンされ、止まらぬ動悸と嬌声が、俺の理性を奪っていく。
「あっ、ああっ、あっ、イくっ!」
生まれ続ける快楽に完全に落ちた俺は、呆気なく白濁の液を希の手の中に放った。
「とぉーまぁー…ねぇ、ごめんって…
ねぇ…こっち向いてってばぁ…」
猫撫で声と、のし掛かる重みを背中に受け、それでも俺は布団を頭から引っ被って無視していた。
「とぉーまぁ…」
この…馬鹿野郎。
ケツが…ヒリヒリする。喉も痛い。
自分の痴態と嬌声を思い出して顔がポッポと火照ってくる。
一度ならずも三度もヤりやがって。
どんだけ溜まってんだ。
一生の内、吐き出す精子の量は決まってるらしいから、ヤりすぎたら枯渇するぞ。
壮年真っ盛りの時にEDになっても知らねーからなっ。
声にならぬ声で思いっ切り文句を言う。
「とぉま…」
うるせぇ。
“とぉま”“とぉまぁ”って、甘えて声で名前を呼ぶな。
ちょっとは反省しろ!年中発情期の猛獣めっ!
俺は怒ってるんだ。
…所詮、希に『スローセックス』なんて望んだ俺がバカだったのか。
ん?
掛かっていた重みがフッとなくなった。
パタン
とドアが閉まる音が聞こえ、相手にされず諦めた希が出て行ったらしい。
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