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第732話

手袋をして、小さな丸を二つ、それより少し大きめの丸を二つ作った。 高さが20センチ位にはなっただろうか、雪だるまの原型が二つできた。 目玉は何にしようか。何か黒くて丸い物… ベランダから部屋に入るのと希がリビングに入ってくるのと同時だった。 「…斗真…」 「お帰り。どこ行ってたんだ?」 希はバツが悪そうに、黙って小さな白い箱を差し出してきた。 「…これ…」 「うん。斗真のご機嫌直しのために買ってきた。 正月でも開いてて良かったよ。」 「…開けてもいい?」 「勿論!」 テーブルの上でそっと開くと、抹茶とチョコレートのケーキとプリンが二個入っていた。 無意識に顔が緩んでいたのだろう、希はそんな俺を見ながら満足気に微笑んだ。 「…ありがとう…」 取り敢えず礼を言うと 「どう致しまして。 ところで斗真は何やってたの?」 俺は黙って希の手を取ると、ベランダへ連れて行った。 「…あ…雪だるま…それって…俺と斗真?」 乗せたバランスが悪かったのか、雪だるま同士が寄り掛かり、恋人のようにくっ付いていた。 「かわいいな…なぁ、目を付けてやらなきゃ。 お節の残りの黒豆があったよな。 『食べ物を粗末にするな』って叱られそうだけど…」 希はパタパタとキッチンへ走って行った。 目の前の雪だるまは、中良さげに寄り添っている。 希…わざわざ俺のためにケーキを買いに行ってくれたんだ。 間もなく希は黒豆の入ったタッパーと、ハサミと何かを手に持って戻ってきた。 「じゃあ、目はこれで…口と手はこれね。」 一粒ずつ顔に埋め込んだ。 そして、赤いモールをその下に、金のモールは胴体にそれぞれ二箇所ずつ差し込んで、笑った顔の雪だるまができあがった。 「溶け合って…一つになるんだな。」 希が弾けるような笑みを見せた。

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