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第734話
納得したことなのに、何かの拍子で思い出す。
そう。『解決』ではない『納得』という言葉。
やっぱり俺は、一生、このことを引き摺って生きていくのか。
希がいくら愛情を注いでくれても、俺の中の何パーセントかの『希を普通の父親 にしてやれなかった懺悔』は、埋まらないのかもしれない。
希、ごめん。
でも、俺はお前から離れられない。離してやらない。
何も残せなくても、俺のありったけの、俺の全てをお前にやるよ。
希は…きっと俺の思いに気付いている。
泣くんじゃなかった。
アレを見せなければ良かった。
それでも希は何事もなかったかのように、ひたすら俺を幼児のように甘やかし、嚥下するのを見計らっては、ひと匙ひと匙食べさせてくる。
俺も、それを拒絶することなく口を開けては咀嚼していた。
最後の一口を食べ終えると魅惑のひと言が降ってきた。
「チョコもいくか?」
思わず頷く俺の頭をポンポンと撫でて
「プリンは後で一緒に食べようぜ。」
と言い、また餌付けを始めた。
お腹が満たされた俺は、毛布に包まれたまま希に肩を抱かれて、ぼんやりと時間を過ごしていた。
何もせずに過ぎていく時間。
それすらも愛おしくて、希にくっ付いていた。
希…何を考えてる?
未だに吹っ切れない俺のことを『バカだな』って思ってるんだろうか。
希の中では、とうの昔に終わったことなんだろう。
でも、でも俺は…
「斗真…」
見上げると愛おしい男の顔があった。
「何を思っててもいいから、一生一緒にいて。
俺から離れないで。」
ぶわりと涙で覆われ霞んだ視界のまま、希に思いっ切り抱きついた。
やっぱり…俺の、俺だけのものだ。
離してやるもんか。
抱きしめ返される腕の強さと温もりに身も心も預け、俺は幸せの余韻に満たされていった。
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