740 / 1000
第740話
そして今…
俺の隣に斗真、テーブルを挟んで高橋が俯いている。
ここは行きつけの一つ、和食店の個室。
リーズナブルで小洒落ていて客層も良いので、商談とかでもよく使っている。
すっかり顔馴染みになった店員の遼君がオーダーを取りに来た。
軽口を叩きながら適当に料理を選び、酔い潰れたくない俺はウーロンハイ、斗真と高橋は生ビールを注文した。
「で?新年早々話って何?」
斗真とのイチャラブタイムを邪魔された俺は、無意識につっけんどんな口調になっていた。
「申し訳ありませんっ!
でも、この長期休暇の間もずっと悩んでて…もうどうしようもなくて…相談するのに適任なのはお二人しかいないと…
本当にお時間取らせて申し訳ありませんっ!」
「だから、何?」
飲んでもいないのに、既に顔を赤く染めた高橋は、意を決したように一気にまくし立てた。
「男性と結婚前提のお付き合いをするに当たっての、心構えを教えて下さいっ!」
俺と斗真は顔を見合わせ、同時に叫んでいた。
「「はあっ??」」
かわいそうに、高橋はふるふると震えている。
声を掛けようとしたその瞬間
「お待たせしましたっ!ウーロンハイと生二つっ!
続いて料理もお持ちしますよっ!」
完全に出鼻をくじかれた感の高橋は、もう涙目だ。
俺が泣かした訳ではない。
フリーズする俺達と涙ぐむ高橋の様子に、遼君が
「遠藤さーん、虐めちゃダメじゃないですか!
はい、仲直りのカンパーイ!」
と、場にそぐわぬKY丸出しの言葉を吐いた。
「そんなんじゃないからっ!
ちょっと、料理置いたら出て行ってくれよ!」
「はいはーい、お邪魔しましたぁー!」
と遼君はハイテンションで襖を閉めた。
ともだちにシェアしよう!

