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第742話

「ちょっ、希! そんなに責めるような質問したって答えられないじゃん! …なぁ、高橋。 お前竹中さんと出会ったのいつ?何処で?」 高橋はモジモジしながら 「去年の夏、本屋でばったりと。 あ、その時は元彼女(カノ)一緒だったんですけど別のコーナーにいて俺一人で。 たまたま手を出した棚の本が、竹中さんと被ったんです。 まるでベタな恋愛小説みたいな… 手が触れた瞬間、電流を流されたみたいに凄いショックで動けなくて。 竹中さんも同じだったみたいで、手を握って動かなくて。 運命の出会いってこんな感じなのかな、ってボンヤリ思ってました。 しばらくしてから、お互いにハッと気付いて謝罪と、社内で見たことあるね、って話になって。 それから時々誘われては、二人で普通にご飯食べに行ったりしてました。 秋に、俺が彼女と別れた、と知ったら何故かうれしそうでしたね。」 「うわっ…ベタだ…痛っ! 斗真、何で叩くのっ!」 “ベタだ”と言った途端に、斗真に頭を叩かれた。地味に痛い。 叩かれた所を撫でつつ斗真を睨むと、ちろんと横目で見て無視された。 「で?告白されたのはいつ?」 「クリスマスに『話がある』って言われて食事に行ったら告白されて… 『即答しなくてもいいから、考えてほしい』って。 そして躊躇してるうちにそのまま長期の休みに突入して…」 「高橋、竹中さんのこと好きなんだろ? 心構えもヘッタクレもないよ。 『俺も好きです』って飛び込めばいいじゃん。 しっかし…あのイケメンも“お仲間”だったとはなぁ… だから女には なびかなかったのか…」 「俺はいいんですよ、何言われても何されても。 でも、あの人が非難されたりするのは…」 そう言って高橋は、また俯いた。

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