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第744話

斗真はジョッキを持って、高橋が座っていた場所に座り直すと俺に文句を言ってきた。 「希、あんな意地悪な言い方ないだろう? 本人悩んで必死なのに。」 「ふんっ。俺と斗真のイチャラブタイムを奪うからだろ? それに、俺に相談ってよりか、お前に相談のパーセンテージの方が高かったんだろ。 斗真も斗真だ! あんなに密着して内緒話しやがって。」 「何言ってんだ。ま、俺の方がセンパイだからな、色んな意味で。 アイツはきっと誰かに背中を押してほしかったんだよ。 …明日は有休だな、二人とも。 なぁ、休みの間 散々くっ付きまくってただろ? 今日もベタベタするつもりだったのか?」 「…当たり前だろ…今日だって、もう斗真不足で倒れそうなんだ…」 「ほんっとに…どれだけ甘えたら気が済むんだ? 甘えん坊の希ちゃん?」 揶揄う斗真を横目で見て、ぐびぐびっ とウーロンハイを空けた。 「…どれだけしても…足りねぇよ…」 「希…」 回り込んで斗真を抱きしめようと、腰を上げた瞬間 「はい、お待ちー! ご注文は以上ですね?ごゆっくりどうぞー!」 遼君が、けたたましく大声を上げて料理を提供すると出て行った。 空気読めよ、空気… がっくりと力が抜け また座り込んだ俺は、とにかく早く斗真と二人になろうと、急かして料理を平らげた。 三人分の料理は流石にキツかったが、美味いし良しとしよう。 妙な疲れの残る身体を引き摺るようにして、やっと家に辿り着いた。 斗真はすぐに風呂の準備をしてくれ、俺のジャケットとネクタイを外すとハンガーに掛けてくれた。 「希、何か疲れてないか? 酷い顔してるぞ。」 むにむにと、頬っぺたを摘まれた。 「…高橋のせいで…今日は定時に帰って、斗真を補給しようと思ってたのに… アイツのせいで…」 摘まれたまま、不貞腐れて答えた。

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