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第746話

斗真は呆れたのか怒っているのか…こちらも無言で俺の身体にお湯を掛けると、スポンジにボディソープを数度プッシュして泡立て、俺の身体を洗い始めた。 ホイップクリームみたいな泡に包まれ、俺はひたすらに大人しく、斗真が洗ってくれるのを見ていた。 アソコもココも“無い物のような扱い”で、ささっと洗い上げる斗真。 髪の毛も、まるで犬コロを洗うようにわしわしと(そこに愛情はあるのか!?と疑わしくなるような手つきで)洗われ、タオルでこれまた わしわしと水分を拭き取られた。 「はい。終了。」 俺を湯船に追い立て、斗真は自分を洗い始め た。 何だか泣きそうになってくる。 俺、何かした? 揶揄い過ぎた? 涙目でじっと見ていると、洗い終えた斗真が 「そこ、詰めて。」 と俺を隅に追いやり入ってきた。 大きく溜息をついた斗真は、真正面から俺を見据えると 「希、お前会社ではチーフなんだからな。 公私混同絶対禁止! 部下が困ってたら助けてやらなくてどうするんだよ。」 「…プライベートまで面倒見る義務はない。」 「そりゃそうだけど、今回は事情が事情だろ? 俺達はボスのお陰でみんな受け入れて認めてくれて、何の障害もない。 でも、高橋は、まだそうじゃないだろ? 自分の気持ちも持て余して、好きだっていう自覚も薄くて。 『普通の』恋愛じゃないんだ。 頼ってきたら何かアドバイスやればいいじゃないか。 お前がそんな度量の狭い男だとは思わなかった。」 「…俺は…ただ…早く斗真を補給したくて…」 斗真は呆れたように 「希、おいで。」 と両手を広げた。 その言葉に、俺は水飛沫を散らしながら斗真に抱きついた。 斗真は俺を膝に抱き上げると 「困ったちゃんだな。 正月の間に甘えグセついちまったのか?」 と、くすくす笑った。

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