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第748話

それから…宣言通り斗真は、俺がどんなに仕掛けてもその挑発に乗らなかった。 緩く芯を持ちかけた斗真自身を握ろうとして腰を引かれ手を叩かれて、胸の粒を弄ろうとするとガードされた。 何とか斗真をソノ気にさせようとするそんな俺を…斗真は宥めては落ち着かせ…それを繰り返すこと五(たび)… 遂に俺は諦めた。 「斗真のばか…ちょっとくらい相手してくれたっていいじゃん。」 背中を向け、拗ねる俺に 「だって。『ちょっと』で終わらないだろ? 最後までヤっちゃうだろ? さっきから言ってるじゃないか。 平日は無理だ、って。 希の気持ちも分かるけど、明日の仕事に差し支えると困るのはお前もだろ? だからゆっくりできる週末まで待ってくれ、って言ってるんじゃないか! それとも何か? 俺はお前の単なる性欲のはけ口なのか?」 くるりと振り向き反論する。 「そんな言い方… 俺はただ、お前と愛し合いたいだけなんだってば!」 「分かってるって。 でも、俺の気持ちも身体のことも考えてくれよ!」 「…分かった。もう、いい。お休み。」 また背中を向け、布団を被った。 何で分かってくれないんだよ。 不安でしょうがないんだって。 毎日繋がってないと、斗真が何処かへ行ってしまいそうで怖いんだって! 「希…」 斗真が名前を呼ぶけど、完無視した。 はあっ…と大きな溜息が聞こえ 「希、お休み。」 と小さな声が聞こえて、もぞ…と動いた後、静かになった。 ちらりと後ろを振り返ると、斗真が背中を向けて、もう寝息を立てていた。 何だよっ! 無視かよっ! こんな時は、後ろからそっと抱きしめて眠れよ! ばかっ!斗真のばかっ! 遣る瀬無い気持ちで自分を抱きしめ、悶々とした心を振り払うことができずに、次第に眠りについた。

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