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第752話
自分のデスクに戻ると、もらった資料をばさりと起き捨て、ため息をついた。
俺らしくない。
あんなひと言くらいで斗真を疑うなんて。
そして、そのために仕事に身が入らないなんて。
「…チーフ…顔色が悪いですよ。」
その声に顔を上げると、斗真が目の前にいた。
「斗真…」
「急ぎの仕事がないなら早退した方が良さそうですね。
俺、あっち方面に用事があるので送っていきます。」
相変わらずオンとオフを切り替えるのが上手いんだな。
確かにここでは、俺とお前は上司と部下だし。
公私混同するなと、ボスからもキツく言われているから。
「大丈夫。一人で帰れるから。」
それに対して、斗真は無言でホワイトボードの所へ行くと何か記入し、二人分の鞄を持つと俺の腕を掴んで歩きだした。
「斗真?」
「いいから、言うこと聞いて。」
そしてタクシーに乗り込むと、マンションの住所を告げた。
玄関に着くまでお互い無言だった。
「風呂入る元気ある?
ないなら、ほら、さっさと着替えて。」
斗真の言う通りにスウェットに着替え、布団に潜り込んだ。
家に着いて気が緩んだのか、身体が重くなり段々動けなくなってきた。
キッチンで何やらバタバタとしていた斗真が、お盆に何か乗せてやってきた。
俺を起き上がらせながら
「希…これ飲んで。
生姜入りの玉ねぎスープ。
弁当は無理して食べなくていいから、そのまま残しといて。
…体調悪いなら悪いって言えよ。
ごめん、気付いてやれなかった俺が情けない…」
そう言って、ふぅふぅ と冷ましながら飲ませてくれた。
違うんだよ、斗真。
知恵熱(!?)の一種だと思う。
お前が夕べ言うこと聞いてくれないし、竹中さんのことを熱く見つめて語るから…ヤキモチ焼いて一人で悶々としてただけなんだ…
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