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第753話

そんなこと、プライドにかけて言えるはずもなく、黙ったままスープを飲ませてもらった。 子供みたいに甘えて、食べさせてもらうのは恥ずかしいけど、何だか今の俺には心地いい。 玉ねぎの甘みとピリッとした生姜が良く合って、温かさが腹の奥にゆっくりと落ちていった。 「…美味しい…」 「そうか、良かった。 また作ってやるからな。」 スプーンを差し出されるまま口に入れて飲み込み、あっという間に完食し空になった器を見て、斗真は安心したように ほおっ と息を吐いた。 「俺、今日約束してる三件だけ新年の挨拶回りに行ってくるから。 昼過ぎには帰るから、いい子で待ってるんだぞ。 午後からは一緒にいるから。 もう『直帰』にしてあるから、心配しないでゆっくり休め。」 斗真はそう言って、俺のおでこにキスを一つ落とすと 「全く…構ってもらえないくらいで熱なんか出すなよ… 行ってきます。」 と呆れたように笑いながら出て行った。 ポツンと一人、ベッドの上。 男前な斗真に、また惚れ直した。 と同時に自分の不甲斐なさが情けなくて落ち込んだ。 いつからこんなに情けない大人に成り下がったのか。 夕べのあんなことくらいで拗ねて、斗真が誰か他の男を見たくらいで嫉妬して。 いや、待てよ…ひょっとして…あの事件がまだメンタルを破壊してるのか? あれからまだ半月も経っていないんだ。 自分が思っていた以上に、ダメージが大きかったのかもしれない。 俺が被害に遭った訳でもないのに。 俺よりも斗真の方が傷付いているのに。 そうだ…この時間なら起きてるはず。 ユータに電話してみようか…

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