753 / 1000
第753話
そんなこと、プライドにかけて言えるはずもなく、黙ったままスープを飲ませてもらった。
子供みたいに甘えて、食べさせてもらうのは恥ずかしいけど、何だか今の俺には心地いい。
玉ねぎの甘みとピリッとした生姜が良く合って、温かさが腹の奥にゆっくりと落ちていった。
「…美味しい…」
「そうか、良かった。
また作ってやるからな。」
スプーンを差し出されるまま口に入れて飲み込み、あっという間に完食し空になった器を見て、斗真は安心したように ほおっ と息を吐いた。
「俺、今日約束してる三件だけ新年の挨拶回りに行ってくるから。
昼過ぎには帰るから、いい子で待ってるんだぞ。
午後からは一緒にいるから。
もう『直帰』にしてあるから、心配しないでゆっくり休め。」
斗真はそう言って、俺のおでこにキスを一つ落とすと
「全く…構ってもらえないくらいで熱なんか出すなよ…
行ってきます。」
と呆れたように笑いながら出て行った。
ポツンと一人、ベッドの上。
男前な斗真に、また惚れ直した。
と同時に自分の不甲斐なさが情けなくて落ち込んだ。
いつからこんなに情けない大人に成り下がったのか。
夕べのあんなことくらいで拗ねて、斗真が誰か他の男を見たくらいで嫉妬して。
いや、待てよ…ひょっとして…あの事件がまだメンタルを破壊してるのか?
あれからまだ半月も経っていないんだ。
自分が思っていた以上に、ダメージが大きかったのかもしれない。
俺が直接被害に遭った訳でもないのに。
俺よりも斗真の方が傷付いているのに。
そうだ…この時間なら起きてるはず。
ユータに電話してみようか…
ともだちにシェアしよう!