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第755話

暫く腑抜けになったように、ぼんやりとベッドの上に座り込んでいた。 気を取り直して顔を洗いに洗面所に行くと、鏡の中に何とも情けない顔をした俺がいた。 斗真が見たら、なんて言うだろう。 バシャバシャと顔を洗って、顔を見つめる。 いいとこも悪いとこも、カッコ悪いところも。 斗真は『どんなお前でも愛してる』と何度も言ってくれた。 イケメン・スパダリでなくてもいいんだ。 アイツには…丸ごと俺を見せる。 抱きしめて抱きしめられたい。 お前に甘えたい、甘えられたい。 斗真…早く帰ってこいよ。 じっとりと変な汗をかいていたのを今更ながら思い出した。 さっぱりしたくてシャワーを浴びることにした。 俺の嫌な部分を全て流し去るように、頭からお湯を浴びた。 自分の中の汚い部分が流れ出し、綺麗なガラスの煌めきになっていくのをイメージする。 心なしかさっぱりとして、現金なもので斗真と一緒に過ごせると思ったら先程までのマイナス思考が薄れていた。 時計を見ると もう昼で…あと一時間くらいで斗真が帰ってくるはずだ。 午後から一緒にいるから、って言ってたよな。 ずっと、ぎゅってしてもらおう。 今か今かとワクワクしながら布団に(くる)まって待っていると、玄関を開ける音がした。 斗真だ! 慌てて寝たフリをする。 どうせバレるんだけど。 遠慮がちに寝室のドアを開けて、斗真が入ってきた気配がした。 「希…寝てるのか?」 斗真は、俺のおでこにそっと手の平を当てた。 冷たくて気持ちいい。 「何だか熱っぽいな…」 (さっきシャワー浴びたばかりだからな) 「病院に連れて行った方がいいのかな…」 (半分仮病だから、行かなくていいよっ!) 「昼飯…どうすっかな…希用におかゆでも作ってやるか…」 (ちゃんと弁当食べるから!) 斗真はベッドの端に座ると、俺の顔を覗き込み、髪の毛を掻き上げてまたおでこを触り、首の後ろを押さえた。

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