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第764話

俺はベッドから起き上がると、ゆるゆると緩慢な動作で脱ぎ散らかした物を拾い、それらを抱えてキッチンへと向かった。 「希!?そんな格好で何やってんだ!? もう…お前、そのまま風呂に入ってこい!」 パタパタとスリッパを鳴らして飛んできた斗真は、俺の腕を取ると、脱衣所へ引っ張って行った。 「一人で入れるだろ? ちゃんとあったまるんだぞ!」 俺は『うん』とも『嫌だ』とも言えず、黙って斗真を見つめていた。 そんな俺を見た斗真は、頭をガシガシと掻いて 「あー、もー、本当にー」 とボヤいた後 「晩飯遅くなるけどいいよな!」 と叫ぶと、自分の服をポイポイと脱ぎ捨て、俺の手を取って風呂場へ入った。 手を引かれるまま椅子に座らされ、熱いシャワーを掛けられる。 「目、瞑って。」 途端に頭からお湯が流れ落ち、わしゃわしゃとシャンプーで洗い流される。 マッサージをするようにトリートメントされ、丁寧にすすがれた。 それが終わると、モコモコの泡で全身を撫でるように洗い清められ、湯船に浸かるように言われた。 大人しく言われた通りにした。 斗真はさっさと自分を洗ってしまうと、俺を抱えるように背中から抱きしめてきた。 ほぉっ…と大きく息を吐いた斗真は、耳元でささやいた。 「お前を置いてどこにも行かない。 お前以外に誰にも目移りしない。 だから安心して俺だけを見てろ。 俺が愛してるのは、希、お前だけだから。」 返事したくても声にならなくて、こくこくと頷くと 「『俺に愛されてる』って、もっと自分に自信持てよ。」 と、頬にキスされた。 うれしくてありがたくて…また少し、泣いた。

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