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第768話

暗闇の中で斗真が くふん と笑う。 「…俺達、お互いが好き過ぎて堪んないのな。 希、我慢するな。溜め込むな。 俺はどんなお前も受け止めるから。 俺のことも受け止めてくれ。 愛してるよ。」 「斗真…」 「ほら、もっとこっちに来て。 ぎゅってして。 …お休み。」 「斗真、愛してる…キスだけお願い。」 「うん。」 優しいキスが唇に降ってきた。 ちゅっ ちゅっ ちゅっ 「…これ以上は…今度な。」 「うん。ありがと。」 また擦り寄って、斗真の匂いを吸い込む。 いい子、いい子、と斗真が頭を撫でてくれる、それだけでうれしい。心が踊る。 「お休み、斗真。」 「うん、お休み。」 俺は大人しく斗真にぴったりとくっ付いて目を閉じた。 満たされた心。 喜びに溢れる思い。 真っ直ぐな斗真の愛に満たされて、俺は夢の中へと落ちていった。 カーテン越しの明るさに、意識が戻っていく。 「…とーま…」 手を伸ばして探すけれど、冷たいシーツに触れるだけ。 「斗真?」 耳を澄ますと、キッチンから何やらガタガタと音が聞こえ、香ばしい匂いがしてきた。 キッチンだ! 慌てて飛び起きると、下に散らばした服を拾って身に付け、キッチンへ走って行った。 「斗真!」 俺に気付いた斗真は 「希、おはよ。体調は?どう?」 フライパンを振るう斗真に背中から抱きついて 「もう大丈夫。何作ってんの?」 「出し巻き卵。…ちょっと待ってて… はい、できた。 希、おはようのキスは?」 ちゅ 何だか照れ臭い。 お互いに頬を染めながら、テーブルを見ると、もう朝食と弁当が、ほぼ出来上がっていた。 「美味そう…」 「俺が作ったんだ。美味いに決まってる。 さ、座って。 今、ご飯よそうから。」 後ろ姿をぼんやり眺めていると、ご飯と味噌汁を持ってきてくれた。

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