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第771話

竹中さんは俺が近付くと、満面の笑みを浮かべて立ち上がると 「先日は本当にありがとうございました。 お陰様で高橋君と思いを交わすことができて…本当に感謝しています。」 と、俺の手を取ってぶんぶん振り回した。 馬鹿力。ちょっとだけ痛い。 「いいえ。お役に立てたなら何より。 ところでお昼は終わったんですか?」 「ええ。 あなたにちゃんと直接お礼を言おうと思ってお待ちしてたんです。お会いできて良かった。」 「それはお待たせして申し訳ありませんでした。 そんなお礼なんて…」 「いえ、今度良ければ俺達と飯でも行きませんか?美味い店があるんですよ。 勿論俺の奢りで。 今その話を彼にしていたんですよ。」 うんうんと斗真が頷いている。 「それは楽しみだな。 でも、惚気話で胸一杯腹一杯になりそうですけどね。」 「あははっ。それはお互い様ということで…ではまた都合の良い日時をお知らせ下さい。 では…失礼します。」 颯爽と去って行く後姿を見送ると、斗真の前に座った。 「ずっと話ししてたの?」 「いや、五分くらいかな…何?またヤキモチ? お礼を言われて、四人でご飯でも、って話をしてただけだよ。」 呆れたように言われるが、ちりっと鈍い胸の痛みが生まれていた。 「…そうだよ、ヤキモチだよ。悪かったな。」 「希…はぁ、もういいや。 ご飯食べよう。昼休みなくなっちゃう。」 マズい。また機嫌を損ねた。 ごそごそと弁当を開け始めた斗真につられて、俺もため息をつきながらゆっくりと風呂敷を広げた。 蓋を開けると、いつもの斗真の愛情たっぷりの中身。 「いただきます。」 美味い。噛み締めながら食べる。 「どう?味濃くない?」 「ううん、美味い…全部手作りで…ありがとう。」 「どういたしまして。」 会話が続かず、黙々と食べ進める。

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