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第774話
「いい子、いい子。」
思った通り、褒められて頭を撫でられた。
幼児じゃないんだから、そんなことされたら普段はひと言言い返すところだが、今日はそんな気は更々ない。
頭から頬に下りてきた手の平に、すりすりと擦り寄ると、そのまま顎を掴まれてキスされた。
うっとりと唇の感触を楽しんでいると、ふっと離れていく。
名残惜し気に目を開けて唇を目で追うと
「あとで沢山キスしてやるから、先にご飯食べよう。」
と、斗真が頬を染めて呟いた。
無言で何度も頷いた俺まで、真っ赤になっていたようだ。
元気が出るから、と季節外れのひつまぶしが登場した。
確かに…うん、元気出そう。
違う元気が。
そんなこと思ってても口には出さない。
言おうもんなら、斗真がむくれるに決まっている。
「ありがとう」と言って美味しくいただく。
はぐはぐと食べ続ける俺を斗真はにこにこと笑いながら見ている。
「良かった、希が全部食べてくれて。」
「うん…美味しかった。ありがとう。」
「アイスもあるからな。
お前の好きなデザートタイプのやつ。」
「え!?ホント!?やったぁ!」
「ここ片付けたら持ってきてやるから待ってろ。」
とことんまで俺を甘やかすつもりなんだ。
うれしい。素直にうれしい。
片付けをする斗真を見ながら、ワクワクしながら待っていると
「はい!」
と目の前にスプーンと一緒に置かれた。
食べさせてくれないかな。
期待に満ちた目で見つめると、分かってくれたのか
「食べさせてやろうか。」
斗真はそう言って、ぺりぺりと蓋を外すと
「はい、希。あーん。」
燕の子供のように口を大きく開けると、ひと口分を掬って入れてくれた。
「どう?美味い?」
「うん。」
「良かった。」
また口を開けるように催促される。
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