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第777話
side:斗真
希が不安定になってる。体調を崩す程に。
何が原因なのか…思い当たる節があり過ぎて、決定的なことが分からない。
一つは…あの事件。
きっと、希はまだ心のどこかで引き摺って、自分のせいだと責め続けている、と思う。
俺の中では…『完全に忘れた』とは言い難いが、『希に愛されてる』という確固たる信念が揺るがないし、いろんな人達のアドバイスで、自分の中でほぼ昇華しつつあるのだが。
自分で言うのも何だが、俺は希が思ってる程、か弱い乙女ではないのだ。
二つ目は、俺に対する度を超えた執着。
普通に竹中さんを見てただけだぞ!?
それなのに、あんな態度を取るか?
じゃあ、俺はこの先、相手が男性なら話すこともできないのか?
仕事にならないじゃないか。
三つ目は…執着と被るが、『俺にいつか捨てられるんじゃないか』っていう強迫観念。
希のお母さんとの確執が無くなった時点で解決した、と思っていたけれど、多感な思春期に受けた傷は相当根深いのかもしれない。
一体、どうしてやったら希が安心するのだろうか。
言葉だけでは足りない。
それは経験済みだ。
毎日抱かれる?
それは俺の身体がもたない。
何をどうすれば希が満足して、傷付いた心が癒されるのか。
俺は俺なりに悩んでいたのだ。
結局希は出勤したものの、青い顔をして今にも倒れそうだった。
そのままにしておけず、外回りついでに連れて帰った。
取り敢えずスープを飲ませ、寝かしつけたけれど、一人で置いていくのは忍びなかった。
午後の予定を前倒しにして、午前中にぶっ込んだ。遠方ばかりだったから、正直かなり時間的にも体力的にもキツかった。
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