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第778話
それでも心配で、希の食欲が出そうなものを買って帰り、ベッドに直行した。
そっと声を掛けてみる。
「希…寝てるのか?」
眠っているのか、ピクリとも動かない。
おでこにそっと手の平を当てた。
嫌な熱さが、じわりと皮膚を透過してくる。
やっぱり具合が悪いのか。
「何だか熱っぽいな…病院に連れて行った方がいいのかな…
昼飯…どうすっかな…希用におかゆでも作ってやるか…」
ベッドの端に座り、覗き込み、髪の毛を掻き上げてまたおでこを触り、首の後ろを押さえた。
希はそれでもピクリとも動かない。
「微熱…かな。
具合悪いのに無理しやがって…お前の体調不良に気付かなかった俺も悪いんだけど。」
希の反応がない。
多分もう、しんどいのを通り越して寝落ちしてしまったんだろう。
心の声がダダ漏れになってきた。
希が聞いてないのをいいことに、ボロボロと思っていることが口をついて出てきてしまった。
希が起きていたら、絶対に言えないだろうと思いながら、ついつい言葉にしてしまった。
言い終えておでこにキスをすると、また音を立てないようにそっと出て行った。
「斗真!」
キッチンに飛び込んできた希の顔は真っ赤だった。
希が寝たフリして、全部聞いていたなんて思ってもみなかった。
「ばかっ、起きてるんなら起きてるって言えよっ!」
カァッ と全身が火を噴きそうに熱くなり、真っ赤な顔で怒鳴る俺を希は思い切り抱きしめてきた。
「斗真…ヤキモチ焼いてごめん。
挙句に体調悪くなってごめん。」
ゆっくりと背中に手を回し抱きしめると、抱きしめ返された。
どのくらいそうしていたのだろう、無言の抱擁が続いた。
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