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第787話
冷静に、冷静に。
今日の晩御飯はカニ鍋だから、カニ買って帰らなきゃ。
冷蔵庫の野菜室を思い出して、足りない具材をこっそりメモに書き出して「まるで主婦だな」と、我ながらおかしくなった。
間もなく、希は内線で呼ばれて部屋を出て行った。
多分、水上達の処分の話し合いだろう。
他人事ながら何となくブルーになる。
と、すれ違いざま、希に頭をぽんぽんとされて、胸がときめく俺なのだった。
それから気を取り直して書類整理をしたり、電話をして相手先との約束を取り付けたりしているうちに、希が戻ってきた。
…難しい顔をしている。
俺のデスクの横に座ると
「ダメだ、ありゃあ。話が通じない。
宇宙人だよ!
何であんなのを採用したんだ!?
水上も変な女に引っ掛かりやがって。
あっちの前川チーフもお手上げ状態だった。」
「最初はマトモだったらしいんだけどね。
どこでどういう方向に行ってしまったのか…
それとも猫被ってのが、本性が出たのか…」
「もう、話し合いにならないから、両親も呼んで再度話し合うことになったよ。
いずれにせよ、辞めてもらうことになる。
今回が初めてではないから。
もう、見逃すことはできない。」
「うわぁ…修羅場だ…
すんなり引き下がるとは思えないけど…」
「さっき、水上の奥さんから連絡があったんだ。」
「何て言ってるんだ?」
「それがね『離婚を前提に進めます。相手の女にも慰謝料を請求します』って。
どうやら弁護士立ててるみたいだな。」
「もう、再構築は無理だな。」
「仕方ないだろ。それこそ自業自得。
同情の余地なし。自分が蒔いた種。
奥さん、薄々勘付いてて、ばっちり証拠集めしてたらしいから、アイツら二人とも言い逃れできないな。」
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