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第789話

希のひと言で、これ以上聞いても何の情報もないと踏んだのだろう、諦めて、わらわらと蜘蛛の子を散らすように各自がデスクに戻っていった。 はあっ… プライベートなことでこんなに仕事に影響する… 当事者本人は、自分のことだけしか考えられない。 台風の目みたいなもんで、周りが巻き込まれ煽られて被害に遭うんだ。 思い返せば、俺達だって散々やらかしてきた。 できれば記憶を封印して、一生思い出さないようにしたいくらいだ。 ふと思い出すと、恥ずかしくて申し訳なくて、居たたまれなくなる。 それをフォローし、支障のないようにしてくれてきたボスや先輩、同僚達に今更ながら感謝の気持ちが湧いてきた。 「瀬川…」 「何だ?」 「俺と希と…俺達のことで、お前達に散々迷惑かけてきたんだよな、悪かった。 そんで、助けてくれてありがとう。」 「急にどうした?いや、別に…お礼言われるほどのことはないよ。」 「だって、不倫浮気だけでこんな大騒ぎなんだぞ!? 男同士の結婚なんて、天地がひっくり返る大騒ぎだったんじゃないのか?」 「あー、それか…でもさ、ここ外資系だし、割とそういうことに関してはオープンなんだよね。 取引先にもそういう人達がいるし。 あ!ただ、女共は倒れてたよ!くっくっくっ。 それにお前達見てたら、真剣でお互いに思い合ってるのが分かるから、別に気にしなかったし、今でも気にしない。 水上は…嫁さんいるのにルール違反だ。 世間はそういうのに厳しいからな、仕方ない。 ま、成るようにしかならないから、俺達はチーフの言う通りに余計なことは言わずに、粛々と仕事をするだけさ。 お前も気に病まずに、普通にしとけよ。」 今更ながら瀬川の言葉が本当にありがたかった。

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