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第792話

心の中で、ぷんすこ怒りながらも、指示された通りに神殿の椅子に座り、神妙な面持ちで希と待っていた。 厳粛でそれでいて軽妙な太鼓の音と共に、静々と現れた神主さんの所作に興味津々見惚れているうちに祝詞(のりと)が終わり、大麻(おおぬさ)と呼ぶらしい白い紙垂(しで)がついたもので、バッサバッサと清めてもらった。 テレビやドラマで見るヤツだ。 本当にこんなんで効くのだろうか。 いや、きっと信じる者は救われる! ちらりと横目で希を見ると、目を瞑り真剣な顔で真っ直ぐ前を向いている。 茶化すような雰囲気ではなく、俺もまた真面目な顔をして唇を引き結んだ。 「はあっ…終わったぁ…希、お前真剣に祈ってたけど…」 「そりゃそうだよ!お金出してるんだよ!? 祓えるものは祓ってもらわないと! 何のために来たのか!」 お札とお守りと破魔矢を手にした希は、もうそれで気が済んだのか、意気揚々と歩いて行く。 「なぁ、斗真。カニ、カニ買って帰ろう!」 「うん。リストはちゃんとメモしてあるから。」 「流石俺の斗真だな。うーっ、やっぱり冷えるなぁ。 早く帰ってあったまろ!」 切り替えの早いヤツめ。 まぁ、こんなことで希が元気になるなら、それでいいや。 「明日は残り物でカニ雑炊だな。」 「あー、それも美味そうだ。でも、出汁しか残らないかもしれないよ。」 「それでもいいじゃん!」 人通りがなくなると俺に飛びついてきそうな希を制しながら、スーパーに駆け込むと買い物を済ませた。 荷物が重くなったのは、『餅が食べたい!』と、言い張る希のリクエストに応えて、切り餅を追加したからだ。 重い方を希に持たせ、文句も言わずに持ち帰った希の頭を撫でて労ってやった。

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