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第793話
特売で買ったカニはかなり大きく、魚屋さんを煽てて、特別に食べやすいサイズにカットしてもらい、意気揚々と帰ってきたのだった。
野菜もカットして後は鍋に投入するだけにすると、さっさと風呂も済ませた。
「希、ビールどうする?」
「んー…今日はいらない。思いっ切り食べたい気分。」
「分かったー!俺もそうしよーっと。」
昼間の嫌な気分はもう粗方なくなっていた。
厄落としの効果あり…か?
グツグツ煮える具材から美味しそうな匂いがしてくる。
「うーっ、堪らん…希、お腹空いた…」
「斗真、もう少しの我慢だ…あともうちょっと大根が煮えてから…」
鍋を覗き込みながら、希があれやこれやとチェックするのを待っていると、鍋奉行からオーケーが出た。
「よし!斗真、取り皿を出せ。」
仰せのままに恭 しく差し出すと、バランス良く取り分けてくれた。
「カニーーっ!早く食べよう!」
「「いっただきまーーす!」」
舌が火傷しそうなくらいに熱々のカニに、ハフハフしながら食らいつく。
あぁ…至福…
「…美味い…幸せ…」
「斗真、沢山あるからどんどん食べろよ。
今月の俺達のラッキーフードは海産物らしいからな。」
「ん?それって占い?…希…何処目指してんの?」
海産物…だから海老やらアサリなんかを追加してたのか。
揶揄うような俺の物言いに、希はちょっとむくれたが
「いいと言われることは何でも試したいんだ!」
とボソリと呟いて、それからは二人で夢中で食べまくった。
カニを食べると誰もが無言になるって本当だった。
俺達も噂に違 わず、暫く無言で鍋を制覇していった。
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