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第794話

えのきや豆腐の小さな切れ端のみが浮かぶ空っぽになった鍋を前に、お腹を摩りながら 「食った食った、美味しかった…希、ご馳走様。 雑炊にまで…至らなかったな…」 「うん、美味しかったな。 雑炊はまた今度な。」 「少し休んでから片付けようよ。」 「そうだな。今動けないもんな。」 取り敢えず食器をお湯に浸けて、手を繋いでソファーに腰掛ける。 お腹が満たされると、精神的にも満たされるもんなんだな。 こてん と希の膝の上に転がった。 ぷるぷると腿が震え、訝しげに見上げると、真っ赤な顔の希が目に入った。 「…斗真が…斗真が甘えてくれてる…萌える…鼻血出そう…」 「…ばーか。偶にはいいじゃん。 それとも何か?俺が甘えたらおかしいのか?」 むぎゅ 「ぐえっ」 変な声出た。苦しい。抱きつくな! 「希、苦しい、離れろ。」 「ごめん、うれしすぎて泣きそう。 やっぱ厄落とし、凄いな!」 俺の頬を髪を撫でまくり、希が感極まった声で言う。 それに対して、抑揚のない声で答える。 「嘘、大袈裟、紛らわしい。」 「ふふっ。どっかで聞いたことあるセリフ…でも、何言われても感じなーい!」 子猫が(じゃ)れるように、俺に構ってくる希を少々ウザく思いながらも、俺も満更でもなく、されるがままになっていた。 イチャイチャしながらその時間を堪能していると、着信が。 「こんな時間に誰だ?」 「あ…切れた。ん?今度は俺?」 希と顔を見合わせ、お互いの携帯の画面を見た。 「…水上…」 「うわぁ…何?今更何?何の用?」 「『泊まる所がない』とか『嫁が口聞いてくれない』とかだろ? 無視だ、無視。 あんなのに関わったらロクなことない。 斗真、マナーモードにするぞ。」 希はそう言い捨てると、二台ともマナーモードにしてしまった。

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