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第795話
希の背中が怒っている。
せっかく良い気分に上がったところだったのに、奴のせいで台無しになった。
KYめ。そんなんだから嫁にも愛想を尽かされるんだ。
怒りが沸点を迎える前に、何とかご機嫌を直さなければ。
「のーぞみー!片付けて、コーヒーでも飲もうよ。
封切ってないやつあっただろ?」
「…あぁ。俺、片付けるよ。」
「二人でやったら早いだろ?」
甘えるように腕を絡め下から見上げると、希の顔付きが変わった。
「うん。じゃあ一緒に♡」
チョロい。希はチョロい。
くそっ水上め。あとで着拒してやる。
イライラを笑顔で隠し、希と流しに立って後片付けを始める。
「希、明日弁当いる?」
「明日は会食予定があるから、いいよ。
明後日作って!」
「分かった。じゃあ、俺も久し振りに外回りついでに食べてこようかな。」
「何処で食べるの?」
「うーん…和食もいいし、パスタもいいな。
明日の気分次第。」
希が俺に擦り寄ってくる。
擽ったい。
希の気分も落ち着いてきたみたいだ。
後ろから抱きついてくる希を背負いながら、コーヒーを入れて、リビングに持って行く。
「歩きにくい…」
そんな俺のボヤキは完全に無視されて、俺は抱え込まれて座った。
こうやって背中からじんわりと温もりが伝わってくるのって、好きだ。
無防備な部分を守られてる感じがするから。
コーヒーをひと口啜って
「あ、これ美味しい。グラム高いやつだったっけ?」
「うん、そう。いつもより100グラム50円高いやつ。
正月だからちょっと奮発した。」
「流石に値段までのもんだよな。香りもいい。
これに慣れたら今までのが飲めなくなるかも。」
「時々ご褒美に飲もうか。俺が出すから。」
「おっ、斗真君!よっ、高給取り!」
「ばーか。」
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