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第797話

あれから三十分…何の音沙汰もない。 「…瀬川、ちゃんと追い出せたのかな…」 「アイツだって嫁と子供が出て行ったんだ。 リスク回避で必死になるだろう、きっと。」 すっかり冷えてしまったコーヒーを流し込んだ。 と、着信!瀬川だ! 希がマイクモードにしてくれた。 「もしもしっ?」 『チーフーっ!成功ですっ! ありがとうございましたっ! 水上の奴を放り出しましたっ!』 「そりゃ良かったな。大人しく出て行ったのか?」 『荷物を玄関の外に出したのを知って暴言吐いてましたが、取りに行った隙に鍵とチェーンを掛けました! 暫くドアを叩いてましたが、隣の人から“うるさい”って怒鳴られたらしく、静かになりました。 多分、何処かに行ったと思います。』 「災難だったな。 まだその辺をウロついてるかもしれないから、気を付けるように。 まともな精神状態じゃないかもしれない。 奥さん達は、暫く実家にいた方が安全かもしれないな。」 『はい、そうします。 ありがとうございました!』 「ゆっくり休めよ。」 『はい、お休みなさい!』 「お休み。」 「…という事らしい。 俺達の住所は誰も知らないから、ここには来ないと思うが…」 「別れる別れない別にして、早く嫁さんと話すればいいのに。 巻き込まれるこっちは、たまったもんじゃない。」 「会社の弁護士紹介してもらうか…」 「いや、嫁さんの心象が益々悪くなるよ。」 「それもそうだな。 一応、ボスに連絡入れておくか…こんな事で煩わすのも嫌なんだけど…水上の嫁さん、ボス宛直々に物申してるからな…」 ため息をつきながら、凄いスピードで携帯を操作すると 「はいっ、送信! あとはボスに丸投げだ!」 ニヤリと笑ったその顔は“ブラック希”だった。

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