798 / 1000
第798話
翌日、出社した俺達は、すっかりやつれ切った瀬川を見て吃驚した。
「おい、瀬川どうした?
あれからゆっくりできたんじゃないのか?」
「水上は追い出したはずだろ!?」
「ううっ…聞いてくださいよぉ〜…
うちの嫁が『煮え切らないあなたの態度に呆れ返って言葉も出ない!そんな優柔不断な人とはこの先やっていけない』って…
アイツのせいで、俺達離婚の危機なんですぅ…
もう、どうしたらいいのか…
チーフ…何とかしてぇ!」
「はあっ!?飛び火したのか…あーぁあ…
まぁ、水上の突撃をハッキリ断らなかったお前が悪いよな。
俺は何にもしてやれない。
自分の始末は自分でつけるように。
…早退してもいいぞ。
今日のお前の仕事、どうなってる?」
「…午後から一件訪問約束があります…」
「資料早く持ってこい!
そんで、直帰にして嫁さんのところに行って謝罪してこい!」
「チーフ…愛してます…」
「いや…俺は斗真だけだから。お前の愛はいらない。」
げふっ…思わずむせた。
何さり気なく惚気てんだよ。
それを軽やかにスルーした瀬川は
「ありがとうございますっ!
今、持ってきます!」
ぴゅーっ と効果音がつきそうな勢いで飛んで行った。
「…水上と瀬川と…二人分か…残業かもな。
斗真、やれるか?」
「瀬川のは一件だけでしょ?何とかしますよ。」
ため息をつきつつ答えると
「いい子だ。」
と頭をポンポンされた。
誰も見てないだろうな!?
うれしく思いつつも、辺りをキョロキョロ見回すと、誰も見てないことに安堵しながら、希を見つめた。
「帰ったらご褒美にマッサージしてやるからな。」
「やった!」
アガる。まじアガる。
希はプロ並みの腕だから。
ともだちにシェアしよう!