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第803話

side:希 斗真の様子がおかしい。 帰社した時には普通、いや、やっぱり元気がなかった。 俺に群がってくる奴らから離れて、ポツンと一人で自分の席に座っていた。 無理矢理捩じ込んだ仕事の量は大したことなかったはず。 あれくらい、斗真なら朝飯前の仕事だ。 昼に連絡した時には、午前中で終わったと余裕を滲ませていたのに。 一体、何があった? アイツがやたらと『大丈夫』と言う時には大丈夫ではないんだ。 斗真に関する今日の記憶を辿っていく。 俺の中には“斗真コンピューター”が内蔵されているから、すぐに分かる筈だ。 でも…いくら記憶を呼び戻しても、分からない。 俺が帰社した時には…既におかしかった。 みんなは気付いていなかったけれど。 そうこうするうちに、俺と斗真以外は帰宅してしまった。 斗真は心ここに在らずといった風で、書類を触っている。そう、片付けじゃなくて、触るだけ。 そんな集中力が欠けてるなら帰ればいいじゃん。 声を掛けてもぼんやりしている。 どうしたんだ? 一人で帰るのが嫌なのか? すがるような斗真の瞳にハッとした。 こんな時の斗真は俺に甘えたいんだ。 俺の気持ちを確かめたくて迷ってるんだ。 残った仕事は明日に回す! すぐに片付けさせ、手を掴んで部屋を飛び出した。 廊下を歩きながらふと閃いた。 まさか…ヤキモチ? …部下達に送ったメッセが原因? あぁ、きっとそうだ。 斗真は『自分だけに労いの言葉をくれた』と思ってたんだろう。 それなのに、みんなのところにも同じようなラ◯ンが届き、テンパってSOSを出してきた奴のところには俺が応援に行った。 それが分かってショックで、みんなの輪の中に入らなかったんだ!

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