803 / 1000
第803話
side:希
斗真の様子がおかしい。
帰社した時には普通、いや、やっぱり元気がなかった。
俺に群がってくる奴らから離れて、ポツンと一人で自分の席に座っていた。
無理矢理捩じ込んだ仕事の量は大したことなかったはず。
あれくらい、斗真なら朝飯前の仕事だ。
昼に連絡した時には、午前中で終わったと余裕を滲ませていたのに。
一体、何があった?
アイツがやたらと『大丈夫』と言う時には大丈夫ではないんだ。
斗真に関する今日の記憶を辿っていく。
俺の中には“斗真コンピューター”が内蔵されているから、すぐに分かる筈だ。
でも…いくら記憶を呼び戻しても、分からない。
俺が帰社した時には…既におかしかった。
みんなは気付いていなかったけれど。
そうこうするうちに、俺と斗真以外は帰宅してしまった。
斗真は心ここに在らずといった風で、書類を触っている。そう、片付けじゃなくて、触るだけ。
そんな集中力が欠けてるなら帰ればいいじゃん。
声を掛けてもぼんやりしている。
どうしたんだ?
一人で帰るのが嫌なのか?
すがるような斗真の瞳にハッとした。
こんな時の斗真は俺に甘えたいんだ。
俺の気持ちを確かめたくて迷ってるんだ。
残った仕事は明日に回す!
すぐに片付けさせ、手を掴んで部屋を飛び出した。
廊下を歩きながらふと閃いた。
まさか…ヤキモチ?
…部下達に送ったメッセが原因?
あぁ、きっとそうだ。
斗真は『自分だけに労いの言葉をくれた』と思ってたんだろう。
それなのに、みんなのところにも同じようなラ◯ンが届き、テンパってSOSを出してきた奴のところには俺が応援に行った。
それが分かってショックで、みんなの輪の中に入らなかったんだ!
ともだちにシェアしよう!