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第804話
ノリのいい斗真は、普段は盛り上げ役を買って出ることもあるくらいなのに、今日は全くリアクションがなかった。
大騒ぎする奴らの輪の中に、入ってこなかったのだ。
仕事を抱えて忙しいのだろうと、みんなは思っていたようだが、俺は何となく違和感を感じていたのだった。
あの時に“おかしい”という第六感を信じていれば、ここまで斗真を落ち込ませることはなかったのかもしれない。
気付かなかった俺も悪い。
帰ったら、たっぷりと甘やかしてやる。
『お前は俺にとって特別だ、オンリーワンだ、ただ一人の愛する伴侶なんだ』と、その心と身体に叩き込んでやる。
メールくらいで落ち込む斗真が かわいくて、悪いけどおかしくて仕方がなかった。
だから仕事も頑張ってきたのか。
そんなに俺って愛されていたんだな。
そう思ったら、顔がニヤけて緩んでくる。
「うっ、寒っ。」
ビル風吹き荒ぶ通りを避けるように、身を寄せ合って少し歩くと、目当てのラーメン屋に辿り着いた。
ラッキーなことに並ばなくても店内に入れた。
この寒いのに長時間待つのはキツイと思ってたから、ありがたかった。
「斗真、どれ?俺は…味噌で野菜多めと、ギョーザと半チャーハン!」
「俺は…塩で野菜多めで、同じくギョーザと半チャーハン!」
「ここは俺が奢ってやるからな。今日頑張ったご褒美だ。」
「…うん、ありがとう。」
イマイチ元気がないな。
美味いもの食べてお腹が満たされたら、少しは気分も上がるだろう。
そして帰りにケーキでも買ってやるか。
この時間なら、まだ店も開いてるはず。
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