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第806話

斗真は結局、ザッハトルテとイチゴのショートケーキとカラフルなフルーツケーキの三種類を選び、大事そうに箱を抱えて店を出た。 本当に3個も食べるのか!? 内心呆れながら会計を済ませた。 「鞄とケーキで両手塞がったから、手、繋げなくなっちゃったよ。」 残念そうにボヤく斗真がかわい過ぎる。 「そうだな。残念だけど繋いだらせっかくのケーキが落っこちるぞ。 …帰ったらぎゅうってしてやるから我慢しな。 さ、急いで帰ろう。」 天気予報はまた雪マークだったが、まだ降ってはいない。 「夕方から雪がちらついて、数センチ積もるようです。」 偉そうに得意気に語るあのいつもの天気予報士が、外れて悔しがる映像が浮かんできた。 くくっ。何事も謙虚さがなければダメだよな。 やっと我が家へ辿り着いて、斗真は いの一番にケーキの箱を大事そうに冷蔵庫へ片付けた。 俺はエアコンを付け、風呂場に向かうと浴槽にお湯を張り始めた。 コートとジャケットを脱ぎネクタイを緩めながら斗真の側に行くと、同じくコートとジャケットをハンガーに掛けながら、斗真が振り向いてご機嫌な声で言った。 「希、ご馳走様!晩御飯もケーキもありがとう!」 「どういたしまして。 …なぁ、風呂、一緒に入るか?」 「…んー…エッチなことしないならいいけど。 何もチョッカイ出してこないならな。」 「それは…ちょっと自信ないかも。」 「じゃあ却下。一人で入って。」 「斗真冷たい…晩御飯もケーキも奢ったのに…」 「それはそれ。これはこれ。 先に入る?後にする?」 「…先に入る。」 何だよ。甘えさせてやろうと思ってんのに。 ちょっとムッとした。

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