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第807話
いやいや、ここは腹を立てるところじゃない。
斗真を甘やかしてやるって決めて帰ってきたんだから。
変な喧嘩みたいなのは、絶対に避けたい。
敢えて平気なフリをして着替えを持つと、バスルームへ向かった。
今、斗真はどんな顔をしてるんだろう。
してやったりか、それとも残念そうな顔か。
まぁ、いいや。
ベッドの中でお仕置きを兼ねて、たっぷりと甘えさせてかわいがってやるから、覚悟しとけよ。
変に気合を入れて身体を洗い、湯船に浸かる。
ほおっ…と口から吐息が漏れた。
何だかもう、マジで疲れた。
仕事ならいいよ。給料を貰う対価だから、諦めもつく。
仕事上のことなら最後までケリをつける。
だが、プライベートなことで振り回されて、斗真を不安にさせて…いや、これはこれでヤキモチ焼いてもらったみたいだから、まぁ許す。
あとで言い訳でも何でも聞いてやって、でろでろに甘やかせてやる。
アイツらが離婚しようがしまいが、自分の蒔いた種だし、ボスに丸投げしたから俺はもう知らない。
上司だからといって、何でも責任を取るというのはお門違いだろ。
はあっ…とまた大きく息を吐き、十分に温まった身体をストレッチで解してから立ち上がった。
斗真は…いない。何処だ?
キッチンから音がする。多分明日の準備をしてくれてるんだろう。
「斗真、出たぞ!あったまっておいで。」
「うん。あとご飯仕掛けるだけだから。」
「俺がやるのに。」
「いいよ。希、今日疲れてるだろ?もう終わったし。」
「ありがとう。」
後ろから抱きついて頸にキスすると
「擽ったい…入ってくる。」
と拘束した腕からするりと逃げられた。
まだ拗ねてんのか?
ふっ…あとでちゃんと聞いてやるから…
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