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第811話

「何か、俺…一人で一喜一憂して…勝手にいじけて落ち込んで、何か…馬鹿みたい…」 「斗真…」 「希、ごめん。」 「斗真。」 優しく名前を呼んで肩を抱き寄せる。 斗真は抗わずに、とんっと俺の肩に頭を付けた。 その髪の毛をゆっくりと撫で梳いてやると 「俺…カッコ悪い…希がいつも俺を一番に考えてるのは分かってるのに、変なヤキモチ焼いちゃって。 一人で拗ねて、その場の雰囲気も悪くしたかも。 ごめん、希…」 大きな身体を縮こまらせた斗真が、切ないくらいに愛おしくて。 「お前の様子がおかしかったから、ひょっとしたらそうかな、って思ってたんだ。」 「だから外食してケーキも買ってくれたのか?」 「ふふっ、そうだよ。少しでも元気になってくれたらいいなって。」 「…希には敵わないな…」 すんっ、と鼻を啜った斗真は俺の胸に擦り付いてきた。 俺にしがみ付いて、すんすんと俺の匂いを嗅ぎまくっていた斗真は、ハッと思い出したように 「あっ、希!アイス、アイス溶けてるっ! 早く食べなきゃ! 俺も…ケーキ!」 と、俺から素早く離れると、食べかけのケーキに飛び付いた。 斗真を抱いていたままの格好でフリーズしていた俺は 「斗真は俺よりケーキなんだな。」 とチクリと嫌味を吐いたけれど、当の本人は知らぬ顔で、三個目のケーキにかぶり付いていた。 (まぁ、いいか。斗真だもん。 いいけど、この後どうするか覚えとけよ。) 俺は溶けかけたアイスをスプーンで掬い口に入れながら、これから始まるであろうラブタイムを心の中であれやこれや妄想していた。

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