817 / 1000
第817話
疲労困憊「お先に」と帰って行く同僚達を見送り、一緒に帰ると約束していた希を待っていた。
今日のご飯は何にしよう。
昨日は外食したし、お茶漬けでもいいから家で食べるか。
冷蔵庫に何があったっけ…鮭の西京漬けがあったな。
それに野菜を沢山入れた味噌汁で簡単に済まそうか。
そうだ、きゅうりの糠漬けも食べないと。
何だか、献立に悩む主婦の脳内だとおかしくなり、込み上げる笑いを押さえ切れずくすくす笑っていると、希が戻ってきた。
「斗真、待たせてごめん!終わったから帰ろう!」
「うん。お疲れ様。もういいのか?」
「ああ。後はプライベートなことだから、ボスに丸投げさ。
とは言え、ボスだって無関係なんだけどね。」
「お気の毒に…」
「まぁ、あの人は上手く収めるだろうよ。
今日はそのまま帰るか?どっかで食べてくか?」
「昨日外食だったから、簡単に家にある物で済まそうよ。
鮭もあるし、味噌汁作るからさ。」
「そうだな。斗真の味噌汁は美味いからな。
じゃ、帰ろっ!」
じゃれ付くように肩を回してくる希に
「まだ会社だから。」
と釘を刺して、肩に回された手を跳ね除けると、途端に希は悲しそうな顔をした。
その顔、反則。
キスしたくて歯止めが効かなくなるのを恐れて見ないフリをする。
「家に着いたらギュウしような。」
「斗真…うんっ!」
おいおい、尻尾が揺れてるぞ。
ご機嫌が復活した希を従えてエレベーターを待っていると、やつれた感じの前川チーフが現れた。
「「お疲れ様です。」」
「本当にお疲れ様です…業務以外の面倒事なんて、いい迷惑ですよね。
あの女を野放しにしていた私にも責任があるので、その点は反省しています。
ご迷惑かけて申し訳ありません。」
ともだちにシェアしよう!