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第818話
ため息をつきながら、前川チーフが頭を下げた。
「いや、前川チーフのせいじゃないですから。
ボスに丸投げしましたから、いい方向に進むと思いますよ。」
「そうですよ。お互いにいい年した大人なんだし、仕事とプライベートは別ですから。」
まじまじと俺達二人を見つめた彼は
「あぁ…噂通り本当に信頼し合ってるんですね。
お二人の雰囲気で分かります。」
到着した空っぽのエレベーターに乗り込みながら
「お気を悪くされたらすみません。
正直、最初は驚いたし、あり得ないと思いました。
でも、納得です。
それに、そのことを耳にしたうちの嫁が…あぁ、元ここの社員ですから社内のことはすぐに情報が入るらしくって…『応援しなきゃ』って力説されましてね。
この件が片付いたら、良かったらうちにご飯食べに来て下さいよ。
都合の良い日、聞きに行きますから。
うちの嫁は中々の料理上手なんですよ。
お二人が来て下さったら、絶対に喜ぶと思うし、私の株も上がりますから。」
くすくす笑いながら
「では、お手数掛けますがよろしくお願いします。」
と手を振って行ってしまった。
玄関前に残された俺達は顔を見合わせて、暫くしてから笑い出した。
「希…俺達ご招待されちゃった…」
「くくっ…そうみたいだな。
結構堅物で通ってる人なんだが。」
「うん。認めてもらってる…みたいだな。」
「ふふっ。楽しみが増えたな。
さ、斗真、帰ろう。早く斗真を補充しないと俺は倒れてしまう。」
「何だよ、大袈裟な。」
「本当だよー。あー、早くぎゅうーってしたーい!」
「ばかっ、外で盛るな!」
軽くいちゃつきながら家に辿り着くと、宣言通り希に巻き付かれた俺なのだった。
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