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第825話

まるでケータリングサービスでも利用したかのような出来栄えに驚いた。 料理だけでなくセッティングにも品がある。 「凄い…これ、お一人で?」 「はい!お二人が来て下さるので張り切っちゃいました。 元々趣味でホームパーティを良くするので… お口に合うと良いのですけど。」 「どれも美味しそうです。 楽しみですよ。な、斗真。」 「本当に。 後でレシピ教えてほしいです。」 「まぁ、うれしい!勿論です! さ、取り敢えずの乾杯はビールで良いですか?」 グラスにそれぞれ注いでもらい注ぎ返し 「「「「かんぱーい!!!」」」」 冷えた液体が喉を通り、胃まで到達した。 うーっ、染みる。 春菜さんの説明を受けながら箸を進めていく。 「美味い!前川チーフ、毎日こんな美味い物食べてるんですか?贅沢だな。」 「この押し寿司、酢の加減が抜群ですね。 何か隠し味あるんですか?」 あれこれと食べ物談義に花が咲き、大分お腹も落ち着いてきた頃、希が口を開いた。 「あの…ところで、俺達に何かお話が、とお聞きしたのですが…」 前川夫婦は顔を見合わせると、春菜さんが何故か頬を染めて話し始めた。 「あの…実は私の従兄弟が結婚することになって…男性同士なんです。 小さい時から可愛がってもらってた従兄弟なんです。 正直吃驚したんですけど、うちの親戚一同誰も反対する人がいなくって。 それでお祝いをですね、現金とは別に何かあげたいと思ってまして。 一体何をあげたら喜ぶのか、皆目(かいもく)見当がつかなくって…本人に聞けば一番いいのでしょうけど、なかなか聞けなくって。 それで、先輩であるお二人にお聞きしたら何かヒントになるかなって、ご無理を言ってお越しいただいたんです。」 一気に話し終えると、ふうっ、と大きな息を吐いた。

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