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第831話
靴を履いたまま壁に押し付けられ、口内を貪られる。
ごめん、希。
また泣いて、ごめん。
後悔なんてしてない。一生お前の側にいたい。
こんな俺を選んでくれてありがとう。
希、希、愛してる。
言葉にしたいのに、唇を塞がれて声にならない。
ただくぐもった声が喉奥で出口を求めて彷徨っているだけ。
蹂躙する希の舌に自分のそれを絡ませる。
根元を擦られ擦り上げ、舌が生き物みたいに交尾している。
「…んっ…むうっ、んふっ…」
くぐもった声が玄関に響いている。
身体の芯がすでに熱い。
腰を密着させてきた希が、ごりごりと服の上から擦り付けてくる。
布越しにでも分かるお互いの昂り様に、何だかおかしくなりながらキスを続けていた。
ようやく唇が離れる頃には、二人とも息が上がり、肩を上下させて見つめ合っていた。
希がふと口を開いた。
「斗真、まだ辛いのか?」
その声は低く掠れていた。
「ううん。違うよ、違うんだ。
…泣いてごめん。俺は後悔なんかしてない。
一生お前の側にいたいんだ。
例えお前が俺のことを嫌いになっても…ずっと思い続ける…愛してるんだ、愛してるんだよ、希。」
「斗真…」
また唇を塞がれた。
ほしい、この男がほしい。
苦しいくらいに胸が痛み、希に慣らされた後孔が疼き始めた。
「…のぞ、み…は、やく…これ、くれ、よ」
はちきれそうな希自身をするりと右手でなぞれば
「ばか、煽りやがって。どうなっても知らないからな。」
「うわあっ」
視界が反転したと思ったら、靴を蹴り脱いだ希に横抱きにされていた。
そのままベッドに放り投げられ、軋むベッドのバウンドに揺られていると、ジャケットを床に捨て、ネクタイを緩めながら近付く猛獣の目をした希が見えた。
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