836 / 1000

第836話

「入ったまま喋ると…振動で…」 希は頷くと、黙って俺の背中を摩ってくれた。 そうして、俺の腰を上げさせると、ゆっくり中から出て行った。 「あっ」 ごぶごぶという音と、太腿に伝わる生温かいものと、呆気なく出て行った喪失感に、じわりと涙の膜が張った。 「斗真。」 優しくキスされ、目を閉じた瞬間に零れ落ちた一筋の涙を掬われて、俺は希に身体を預けていた。 中から溢れ出る愛液をティッシュで拭い、大きく息を吐いたオレは、真っ直ぐに希の顔を見た。 希はもう一度俺の涙を拭くと 「斗真、おいで。シャワー浴びよう。」 と、俺の手を引いてバスルームへ向かった。 途中、後孔から漏れやしないかと気にはなったが、手を引かれたまま小走りでついて行く。 中を掻き出すのは希の役割で、その行為に慣れていくことに戸惑いはあるものの、『コイツの私有物だ』という印のような気がして、甘んじてそれを受け入れる。 希に言われるまま壁に手を突き、尻を突き出すような格好で、洗われる。 恥ずかしいけど仕方がない。 漸く洗い終わったのを確認すると、羞恥に耳まで真っ赤にして、そそくさと身体を洗おうとした。 「ダメだよ、斗真。俺が全部するから。」 「だって、そんな」 反論する俺の唇を塞がれ、ボディソープをつけたスポンジを奪い取られた。 鼻歌交じりのご機嫌な希に、あっという間に二人とも泡でもこもこになった。 目が合うと何だかおかしくなってきて大笑いした。 「何やってんの!?何がしたいの?」 「ふふっ。斗真と離れてた間にできなかったことやってる。 きっと、一緒にお風呂に入ったらこんな風に戯れて遊んでただろうな、って。」 「希…」 それに乗っかって、泡まみれになって子供みたいに遊んだ。

ともだちにシェアしよう!