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第836話
「入ったまま喋ると…振動で…」
希は頷くと、黙って俺の背中を摩ってくれた。
そうして、俺の腰を上げさせると、ゆっくり中から出て行った。
「あっ」
ごぶごぶという音と、太腿に伝わる生温かいものと、呆気なく出て行った喪失感に、じわりと涙の膜が張った。
「斗真。」
優しくキスされ、目を閉じた瞬間に零れ落ちた一筋の涙を掬われて、俺は希に身体を預けていた。
中から溢れ出る愛液をティッシュで拭い、大きく息を吐いたオレは、真っ直ぐに希の顔を見た。
希はもう一度俺の涙を拭くと
「斗真、おいで。シャワー浴びよう。」
と、俺の手を引いてバスルームへ向かった。
途中、後孔から漏れやしないかと気にはなったが、手を引かれたまま小走りでついて行く。
中を掻き出すのは希の役割で、その行為に慣れていくことに戸惑いはあるものの、『コイツの私有物だ』という印のような気がして、甘んじてそれを受け入れる。
希に言われるまま壁に手を突き、尻を突き出すような格好で、洗われる。
恥ずかしいけど仕方がない。
漸く洗い終わったのを確認すると、羞恥に耳まで真っ赤にして、そそくさと身体を洗おうとした。
「ダメだよ、斗真。俺が全部するから。」
「だって、そんな」
反論する俺の唇を塞がれ、ボディソープをつけたスポンジを奪い取られた。
鼻歌交じりのご機嫌な希に、あっという間に二人とも泡でもこもこになった。
目が合うと何だかおかしくなってきて大笑いした。
「何やってんの!?何がしたいの?」
「ふふっ。斗真と離れてた間にできなかったことやってる。
きっと、一緒にお風呂に入ったらこんな風に戯れて遊んでただろうな、って。」
「希…」
それに乗っかって、泡まみれになって子供みたいに遊んだ。
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