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第837話

湯当たり寸前になって慌ててバスルームから飛び出すと、ペットボトルの水を奪い合うようにして飲んだ。 あはははっ…くっくっくっ… 「…あーーっ、お腹痛いっ!面白かったぁ… 逆上せるまで遊ぶって、斗真、お前ガキかよっ!」 「希だってノリノリだったじゃん! あー、面白かったぁ!」 「うん、面白かったよ! …だって…十代の頃にできなかったことを一つ一つ一緒にやろうとしてるんだから…」 「希、お前…」 まだ汗の引かぬ湿った身体を擦り付けてきた希は、俺の肩におでこを当てると 「…一緒に高校行って、大学も同じところに行って、“青春”を一緒に謳歌したかったんだよ。 あの写真で笑ってた斗真を俺は知らないんだ。 どんな奴が友達で、どっかの女に告白されて…俺の知らない時間を過ごしてた斗真を…」 俺はゆっくりと希の肩を押し戻し、今度は俺が希の肩におでこをくっ付けた。 「そんなこと言うなら、お前だってそうじゃん。 マイク達は知ってることでも俺には分からない。 あの写真の中のお前を俺は知らない。」 「そうだったな…ごめん、斗真。」 希は俺を腕の中に抱きしめると、ちゅっ、とキスをしてきた。 俺もキスを返しながら 「なぁ、もう昔のことはいいだろ? 俺は沢山やりたいことがあるんだから。 それとも何か? 若いピチピチの俺の方が良かったのか?」 少し膨れっ面で言うと 「どんな斗真でも愛してるんだよっ! 俺の目の前にいる斗真が…」 と、ぎゅうぎゅうに抱きつかれた。 まだ濡れた髪を撫でて『風邪を引くと困るから』とドライヤーをかけて、俺も同じように乾かしてもらい、バスローブを羽織って手を繋いでリビングへ戻った。

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