839 / 1000
第839話
希がくすくす笑う度に、くっ付いた胸が上下する。
またその胸に擦り付くと、希が
「擽ったい。」
と言ってまた笑う。鼻先に一つキスをしてきた。
「お休み、斗真。」
「お休み、希。」
目を閉じると、さっきの出来事が頭に浮かんでくる。
泣いた割には頭痛がしなくて良かった。
後悔させない、後悔しない。
そう思って結婚したのに、時々こうして棘のように突き刺さる思い。
俺はこの先もこの思いと向き合っていかなければならないんだろう。
そしてその度に、希に心底愛されていることを自覚して満たされるんだ。
ひょっとしたら俺は…心が震えるほどの“その自覚”を確認したくて棘を抜かないのか?
規則正しい寝息が聞こえる。
希はもう寝てしまったのか。
いつものように俺の身体に器用に手足を巻き付けている。
暗闇で見えないその顔を至近距離で見つめる。
希…執着してるのは、俺の方だ。
お前なしでは生きていけないんだよ。
好きだ…愛してる…俺を…俺を愛して…
「愛してるよ、斗真。」
吃驚して飛び跳ねた。
「…希…何で…」
希は俺を抱き込むと
「お前のことなんてお見通しなんだよ。
こんなかわいい奴、誰が手放すもんか。
嫌だと言っても首輪を付けて側に置くからな。
覚悟しろ。」
「希…」
くちゅり
唇をこじ開けて口内に舌が入ってきた。
熱い塊を腰に擦り付けられる。
「…んっ」
甘い声で応えると、希が舌を更に絡めてくる。
このまま、また濃厚な行為に溺れていくのか。
さっき達したばかりだというのに、希自身はもう固く熱を帯びている。
ちゅくっ、と滑った音を立てて唇が離れていく。
名残惜しげに舌先でその唇を追い掛けて舐め上げた。
「斗真、俺に甘えてこい。俺は必ずその手を掴むから。」
ともだちにシェアしよう!