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第841話

髪を…頬を撫でる感触に、次第に覚醒していく。 ゆっくりと瞼を開けていくと、目の前に希のどアップ。 最早もう、見慣れた朝の光景。 「とーま、おはよ。」 「…希、おはよ。」 ちゅっ、と音を立てるキス。 それ以上に濃厚な行為を仕掛けてくる希の肩をやんわりと押し戻した。 「希、お腹空いた。」 「…待ってろ。何か作ってやる。」 ちょっと残念そうな空気を醸し出した裸の希が着替えるのを横になったままじっと見ている。 相変わらず鍛えてるな。 綺麗についた背筋を見つめていると、その背中にむしゃぶりつきたくなる。 昨夜(ゆうべ)の残り香とでも言うのか、雄臭いフェロモンみたいな匂いがふわりと鼻先に届いた。 いや…そんなことしたら今日一日ベッドから出れなくなる。 腹が減ってはナントやら。 朝ご飯食べたら、挿入のないイチャイチャでも楽しむとするか。 二人分の温もりと匂いが残る布団に潜り込んで目を瞑るが、一旦完全に目覚めた頭は妙に冴え始めている。 そのうちトーストとコーヒーのいい匂いがしてきた。 すんすんと鼻を鳴らして、空腹感を紛らわせていると 「とーま♡ご飯できたよー!」 大型犬が纏わり付いてきた。 よしよし、いい子、と頭を撫でてやると、顔中にキスが降ってくる。 このキス魔め。 「もう…起きるから、どいて。」 布団の上から抱き込まれていたのを押し退けると 「その分、後でたっぷりとお返ししてもらうからな。」 なんて空恐ろしい台詞を吐かれた。 「“たっぷり”は遠慮する。」 なんて毒付くものの、あれこれと妄想がフル活動して、顔には出さないものの期待に胸が震えてしまう。

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