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第842話

むくれ顔の希をよそに俺もさっさと着替えて、キッチンへ向かうと、バターの染み込んだ厚めのトーストに、サラダの添えられたベーコンと目玉焼き、湯気を立てているコーヒーがセットしてあった。 「希、お前完璧なダーリンだな。」 「そう思うならご褒美ちょうだい。」 目を閉じてキス待ち顔の希の唇に、そっと触れるだけのキスをしてやった。 「斗真…それだけ?」 「今はこれで我慢しろ。今日は一日好きにさせてやる。」 その言葉に目を丸くして破顔した希は、いそいそと席に着いた。 単純馬鹿。 俺も同じくらい、いやそれを上回る旦那好き過ぎ馬鹿だけどな。 心の中で笑いながら、トーストのお代わりもして満腹になった。 二人で片付けをした後、飲み残しのコーヒーを持ってソファーに並んで座る。 当然のようにくっ付いてきた希が 「あれ?休日のこんな時間に誰だ?」 と携帯に目を止めた。 「マイクだっ!」 俺にも見えるように画面を差し出して見せてくる。 『ハーイノゾミ!トーマも元気かい? 宣言通り、3月(日本着23日)に日本に行くよ。 勿論ユータも一緒にね。 二人で休みをもぎ取ったんだ。 詳しくは来月に入ってから知らせるよ。 取り急ぎ報告まで。 P.S.二人に会えるのを楽しみにしてるから。』 読み終えて、希と顔を見合わせた。 「大変だ!俺達も休み取らなきゃ。何日滞在できるんだろう… おい斗真、それまでに文句言われないように成績上げて、堂々と有休取るぞ!」 「分かってるよ。任せといて、チーフ。 また会えるのか!?やったぁ! うちに泊まって貰えばいいよな? それまでに俺の部屋片付けて、ゲストルーム作っとかなきゃ。」 人懐っこい二人の笑顔が浮かんだ。 そして、その笑顔と一緒に…あの時の記憶がフラッシュバックした。

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