842 / 1000
第842話
むくれ顔の希をよそに俺もさっさと着替えて、キッチンへ向かうと、バターの染み込んだ厚めのトーストに、サラダの添えられたベーコンと目玉焼き、湯気を立てているコーヒーがセットしてあった。
「希、お前完璧なダーリンだな。」
「そう思うならご褒美ちょうだい。」
目を閉じてキス待ち顔の希の唇に、そっと触れるだけのキスをしてやった。
「斗真…それだけ?」
「今はこれで我慢しろ。今日は一日好きにさせてやる。」
その言葉に目を丸くして破顔した希は、いそいそと席に着いた。
単純馬鹿。
俺も同じくらい、いやそれを上回る旦那好き過ぎ馬鹿だけどな。
心の中で笑いながら、トーストのお代わりもして満腹になった。
二人で片付けをした後、飲み残しのコーヒーを持ってソファーに並んで座る。
当然のようにくっ付いてきた希が
「あれ?休日のこんな時間に誰だ?」
と携帯に目を止めた。
「マイクだっ!」
俺にも見えるように画面を差し出して見せてくる。
『ハーイノゾミ!トーマも元気かい?
宣言通り、3月(日本着23日)に日本に行くよ。
勿論ユータも一緒にね。
二人で休みをもぎ取ったんだ。
詳しくは来月に入ってから知らせるよ。
取り急ぎ報告まで。
P.S.二人に会えるのを楽しみにしてるから。』
読み終えて、希と顔を見合わせた。
「大変だ!俺達も休み取らなきゃ。何日滞在できるんだろう…
おい斗真、それまでに文句言われないように成績上げて、堂々と有休取るぞ!」
「分かってるよ。任せといて、チーフ。
また会えるのか!?やったぁ!
うちに泊まって貰えばいいよな?
それまでに俺の部屋片付けて、ゲストルーム作っとかなきゃ。」
人懐っこい二人の笑顔が浮かんだ。
そして、その笑顔と一緒に…あの時の記憶がフラッシュバックした。
ともだちにシェアしよう!