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第848話
いつもの常備菜の準備は明日にすることにして、風呂も済ませ、晩ご飯も早めに食べて、希のご希望通りいちゃいちゃを楽しむことにした。
買ってきた新鮮な牡蠣は定番の牡蠣フライに。
「ぷりっぷりで美味そう…食べ応えありそうだな…ワインも開けるか!」
「さんせーい!あ、でも…斗真、飲み過ぎないように…“ね”。」
最後の“ね”ひと言に込められた希の思いがおかしくて、『ワイン二、三杯で酔うもんか。そんなにいちゃいちゃしたいのか』と、ひとりでニマニマしていると
「何がおかしいんだよー。」
とヘッドロックをかけられた。
「ギブギブギブ!」
慌てて絞められた腕をバシバシ叩くと、やっと外してくれた。
「酷いよ、希。俺何にもしてないじゃん。」
「だって…何か馬鹿にして笑ってた…」
「違うって!『俺って愛されてるなぁ』って思ったらうれしくって、つい…」
「………」
「何だよ!自分で吹っ掛けといて落ち込むな!
ほら、熱々のうちに食べよう!
いっただきまーす!」
自己完結した俺は、凹んだ希を無視して牡蠣フライを口に入れた。
軽く噛むと、じゃわりと熱々の汁が滲み出して危うく火傷しそうになり、すんでのところで口から出した。
「あっちぃーー!ヤバい。汁だけで美味いけと…希、火傷しないように食べろよ。」
「とーま、あーん。」
「おい、人の話聞いてたか?熱々だから火傷するって!
…後でキスできなくなるぞ。」
「それは困るっ!」
現金な奴。慌ててハフハフしてやがんの。
熱いの何のと大騒ぎしながら、ワインも半分残して飲むのを止めた。
俺は…いつもより酔いが早く回り、顔が火照っている。
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