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第853話
結局、休みの間はへばり付く希の相手をしながら(実は俺もそうしたかったから…だけど恩着せがましく“させてやってる感”ありありで)、濃密な時間を過ごしていた。
せっかく日本に来るのだから、と京都行きを提案すると、『京都にお泊り』に食いついたマイクとユータの返事に大笑いしながら、宿泊を何処にするか、あーでもない、こーでもない、と大議論を戦わせ…電話の応対が一番良かった旅館に予約した。
あわせて新幹線の予約もさっさと済ませた。
ラッキーなことに丁度キャンセルが出たばかりだったのか、人の移動が激しい時期にも関わらず希望時間の席が取れた。
「やっぱり“レビュー”って参考になるんだな。
写真見てもいい感じだし。
あちこち観光に行くにも場所的に問題ない。
スタッフも日常会話程度なら英語オッケーって言ってたしな。
斗真のイチ押しは当たりだった。」
「ははっ!そうだろ?きっとマイク達も喜んでくれると思うよ。
三月の京都ってまだ肌寒いよね。何着て行こう…あ!でもその頃、桜はもう咲いてんのか…ガイドブック買ってこなきゃ!」
「うーん、軽いジャケットあればいいんじゃない?着る物はギリギリでいいよ。
明日にでも帰りに本屋に寄ろうか。」
「うん。そうする。」
「効率良く回るならタクシーかな…予約いるの?それとも市内バス?
色々調べなきゃ。取り敢えず泊まる所は確保したって送っとくよ。
ちょっとパソコン触ってくる。」
希はマイクにメールを送るために席を外した。
その時、俺は迎えの準備やら段取りのことで頭が一杯で、胸にちりりと空いた小さな穴に気付いていなかったんだ。
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