857 / 1000
第857話
情けない俺。
一番大切な人を守れないどころか傷付けてばかりいる。
斗真の傷口を抉って苦しめてばかりいる。
どうしたら、一体どうしたらいいのか。
どうすれば斗真が癒されるのか。
誰か、誰か教えてほしい。
声を殺して泣きながら自問自答する。
答えは出ない。
自分自身が嫌になる。
情けない、本当に情けない…
「希?何で泣いてるんだ?」
突然、斗真の声がした。
「…斗真…」
「何泣いてんの?…俺のせい?」
「斗真…」
頬を流れる涙を斗真がそっと拭いてくれた。
そして小さな声でこう言った。
「お前を泣かしてしまう程…俺はお前の重荷になっちゃったのか…ごめん、希…
…俺、お前の側にいない方がいいのかな…」
「え?斗真、何言ってるの?」
「…だから…俺は、お前から、離れた方が、いいのかな、って。
あ…俺は大丈夫。気にしないではっきりそう言って。」
「斗真…それ、本気で言ってる?」
「本気も何も…俺の存在がお前を苦しめるのなら、離れた方がいいかな、って…」
「違うっ!違うんだっ!
俺こそ…俺が斗真の側にいてもいいのかって…
こんなに愛してるのに、こんなに大切に思ってるのに、俺は斗真のことを傷付けてばかりだ。
そんな俺がお前の側にいてもいいのか?
お前を愛していていいのか?」
「希…」
「斗真、俺はお前を思えば思う程、泣かせてしまう…それでもいいのか?
愛してて…いいのか?」
ぼすんっ
斗真が体当たりしてきた。
俺に縋り付くと泣きながら叫ぶ。
「…バカ、離すなよ…この手を一生繋いでいてくれよ…俺、お前なしでは生きていられない…
好きだっ!愛してるんだ!お前しかしないんだ!
嫌だ!別れるなんて、嫌だっ!」
ともだちにシェアしよう!