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第859話
背中に回された斗真の腕が、少し震えている。
「希…」
「斗真、俺…弱くてごめん…」
「希は希のままでいいから…俺こそごめん。」
もう、絶対に離れるなんて言わないでほしい。
そんなこと言われたら、俺は、もう」
言いかけた唇を塞いだ。
舌を捻じ込み、根元から吸い上げる。
はぁはぁと獣のような荒い息を吐きながら、お互いに貪り合うようなキスを繰り返す。
もう、無理だ。
斗真のいない人生なんて考えられない。
俺に見えるのは二人で歩む姿だけ。
傷付いても傷付けられても、互いにその傷を舐め合い癒し合って、また手を取って同じ歩幅で進んでいく。
「斗真、斗真…」
「んっ、希…希っ」
名前を口にするだけで泣きそうになる。
愛おしくて愛おしくて、胸が詰まる。
「愛してる…こんな言葉しか出てこないけれど、愛してる…斗真…愛してるんだ…」
「…くっ…希…愛してる…希…」
頭を撫で、すっかり骨が浮いた鎖骨に吸い付いた。
唇をすぼめて真横に移動しながら跡を残していく。
いつもなら『シャツから見える』とか『そんなとこバレる』とか嫌がるのに、斗真は俺の好きなようにさせてくれている。
思いを込めて唇を動かしていると、斗真が急にそれを手で制した。
嫌だったのか?
不審に思い首を傾げて問うと、斗真はゆっくりと俺と上下の位置を入れ替えた。
そして、もぞもぞと布団に潜り込んだ途端、下半身に甘美な電気が走った。
「うっ…」
斗真が布団を被っているからその様子はハッキリとは分からないが、恐らく俺自身を握り、先端を口に咥えて鈴口に舌先をめり込ませているのだろう。
気持ち良さに自然と腰が揺れる。
じわじわと先走りが溢れて、斗真の口元や手を汚し始めているのだろう。
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