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第865話
二人とも息が上がり、そっと唇を離す。
「…キスだけで…逆上せちまう。」
「あぁ、そうだな。」
体勢を変えて斗真の膝裏を掬い抱き上げると、二人の間に溜まったお湯が、ザバザバと音を立てて流れ落ちた。
目に入るのは厚みの薄くなった身体。
美味いもの、たらふく食べさせてやるからな。
鼻先にキスをして、念入りに身体を拭いてやる。
今日の斗真は嫌がらない。
臣下を統べる女王のように、俺に何もかも委ねてくれている。
髪の毛もセットし終えると、俺の身支度が整うのを鏡越しで見ているのに気付いた。
熱い視線に胸の鼓動は早鐘を打ち始めていた。
汗が引いたのを確認してバスローブを羽織らせ、また横抱きにしてリビングのソファーに座らせてやった。
「ほら、水。」
「ありがとう。希、少し寝かせて。」
「うん、でもその前に何か作るから待ってて。」
「…お腹空いた。」
冷蔵庫の中に何があったかな。ご飯を仕掛けてもすぐには食べれない。
じゃあ、パンにしようか。冷凍室にこの間の残りがあったはず。
俺は在庫チェックをしながら、お腹を空かせた斗真のために慌てて準備を始めた。
コーヒーの香りが部屋に漂う頃合いを見計らって、斗真の側に行く。
「斗真、できたよ。」
返事がない。
顔を覗き込むと、ぐっすりと寝込んでいる。
目の下には薄っすらとクマもできていた。
どうしよう、このまま寝かせてやろうか、いや、何か食べさせてから寝かそうか…そう逡巡しながら前髪をそっと搔き上げると、「うーーんっ」と言いながら、斗真がゆっくりと目を開けた。
「ん…希…?」
良かった、起きた。
「食べてからちゃんとベッドに行こう。
起きれる?」
まだ完全に起きてはいないらしい斗真が、こくりと頷いた。
かわい過ぎる。萌える。
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